『紙つぶて 自作自注最終版』
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〔副題〕 -
〔著者〕 谷沢永一
〔シリーズ〕 -
〔出版社〕 文藝春秋
〔発行年〕 2005-12-05
〔ページ〕 990頁(索引47頁を含む)
〔ISBN等〕 4-16-367760-7
〔価格〕 
〔箱・帯〕 箱:あり 帯:不明
〔体裁〕 四六判:18.9×13.2cm
〔図表〕 あり
〔注記〕 -
〔分類〕 図書
〔備考〕 
書(表紙) 谷沢美智子
装丁 斎藤深雪

 

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目次
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(略)
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関連部分
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564ページ(1976年の項)「情報洪水に処して自己を見失わぬ読書法  丙(8・25)」
《 *
人間の値打ちを測定するのには各種の方法がある。そのうちいちばん簡単で当り外れのない方式は、その人物が過去に読んだ書物を覚えているだけ思い出して貰い、その一冊一冊に○か×かをつけてくれと頼む手である。その時ぐずぐずと迷って躊い、即座に判断できない人は、この型は将来とも役に立たないに決まっているから今のうちに見捨てる。○と×をてきぱきと決める人は、平素から考えを練っていること明白だから信用できる。

中川八洋『正統の哲学異端の思想』(平成8年)は世界の主だった思想史を通覧して、これは人間性に即するから正統、これは人間性に反するから異端と、小気味よく合理的に手際よく分類してまことに痛快である。

諸悪の根源はルソー。ルソーは人間の男女が出合い頭にその場で即座に性交できる世の中にしたいと願っている。賛成の方は手を挙げて下さい。

人間が動物以下に頽廃するのを阻止せんとする○印の思想家は、マンデヴィル、ヒューム、アダム・スミス、エドマンド・バーク、ハミルトン、コンスタン、トックヴィル、ショーペンハウエル、バジョット、ブルクハルト、アクトン、ル・ボン、チェスタトン、ホイジンガ、ベルジャーエフ、これらが中川の挙げる正統の哲学なのである。》

 

872-3ページ(1982年の項)「理解咀嚼と論理批判の平衡と総合  丙(5・25)」
《▽鷲田小彌太は『書評の同時代史』(三一書房)に於いて》硬骨書評の極限を目指す。江國滋の『読書日記』(朝日新聞社)を底流するのは「いかにも紋切型の定型口調」で綴られた「内容空疎な大船調」に過ぎず「浪曲調の定句はめこみが、このエッセイストの人気の秘密でもあるのだろう」と急所を衝き、『超先進国日本』(講談社)に展開された中川八洋の「比較」論法に対しては、「比較はつねにある特定の均質なものに還元しうるものを対象にするときにのみ科学の論理となりうる」のであって、「中川の日本主義社会論は、拝欧主義の裏がえしの論理にしかすぎない」と切り返す。
(中略)

小林秀雄が、公式主義を批判する仕方にも公式ができている、と批判したのはよく知られている。中川八洋『正統の哲学 異端の思想』(平成8年)で明示した問題意識は、左翼攻撃に憂身をやつす俗流ワンパターンの克服である。

〈自由社会の維持と発展にとって、その哲学的支柱を確固とすることは至高に不可欠であるのに、これまでのように、マルクス・レーニン主義を反面教師(敵〉とするばかりで充分であった緊急避難的で安易で脆い論理では、自由社会は思想的に着実に逆走し大混乱に陥っていく。

 

単純化して言えば、全体主義の教義(ドグマ)化に成功したその始祖であるルソーの哲学などをヘーゲル弁証法で書き直したのが、あの体系的なマルクス学であり、このマルクスにもう一度ルソーと、このルソー等の「啓蒙哲学」が起爆剤となった全体主義の源流たるフランス革命をふりかけて料理し直したのがレーニンである>

 

蛇足ながら、思想や論理は、何時の場合でも表向きの看板にすぎず、思想や論理の教えを受けてまた本を読んで、それから不特定多数が行動を起こした例はあるだろうか。》

 

942ページ(1983年の項)「朝鮮戦争の教訓が改めて慄然と蘇る  丙(8・25)」
《▽「日米ハワイ会議」即ち昭和五十六年六月初旬にハワイで開催された日米安全保障事務レベル会議は、「“日本は日本自身で防衛しない限り、日本領土の保全はできない”ことが明らかになった会議だった」と中川八洋『ソ連が日本を核攻撃する』(日本工業新聞社)の冒頭に指摘している。つまり「米国は中東での大規模な戦争が発生した場合、太平洋の全空母機動部隊及びハワイの第二十五歩兵師団も中東へスウィングする、と日本に通告」し、「そのような事態に際しては米国には日本防衛用の戦力がない旨を米国自身が明らかにした」のである。

 

▽途端に僅か数日後の六月十五日、「ソ連はイズベスチヤ紙で、北海道北半は日本の固有の領土でないと大々的に主張」するという、理も非もない非常識で暴慢きわまる歴史捏造歪曲の挙を敢えてしたのに対し、「日本政府も日本国民も怒るどころか、渦まく抗議行動が起こるどころか、まったく何らの反応も示さなかった」のは決定的に由々しき問題なのである。
(以下略)》

 

(以上、引用文の行あけは引用者による)

 

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著者略歴
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谷沢永一
関西大学名誉教授。昭和4(1929)年、大阪市に生まれる。関西大学大学院博士課程修了。主な著書に『完本・紙つぶて』(サントリー学芸賞受賞)『紙つぶて二箇目』『百言百紙』『回想 開高健』『司馬遼太郎の贈りもの』『人間通』『書物耽溺』『文豪たちの大喧嘩』(読売文学賞受賞)『遊星群 時代を語る好書録』<明治篇><大正篇>『名言の智恵 生きる智恵』などがある。

 

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所蔵
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国立国会図書館 あり(請求記号:UM11-H32)
http://iss.ndl.go.jp/

都立中央図書館 あり(請求記号:/ 020.4/ 5023/ 2005)
https://catalog.library.metro.tokyo.jp/winj/opac/search-detail.do?lang=ja
都立多摩図書館 なし

 

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情報元
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他文献
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備考
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「まえがき」に、
《昭和五十三年刊行の『完本・紙つぶて』、その四百五十五篇に、それぞれ一篇ごとに唱和して、新稿を同じだけ書き加えたのが本書である》
とある。

また、32ページに、
《◎掲載紙誌控
注記のないもの 読売新聞(大阪版)
乙       電波新聞
丙       銀花
丁       毎日新聞
戊       カッパまがじん》

《◎8.5ポ組み、追記ふうの自注は、すべてこの本のための書き下ろしである。》

とあり。記号「*」以下の文章が新稿にあたる。

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内容
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内容(「BOOK」データベースより)

稀代の絶品書評コラム全455篇すべてに書き下ろし自注を加えた最終版。愛書家の真情あふれる情熱と執念の書、堂々完成。


内容(「MARC」データベースより)

昭和53年に刊行された稀代の絶品書評コラム「完本・紙つぶて」の全455篇すべてに、それぞれ1篇ごとに唱和して書き下ろし自注を加えた自作自注最終版。愛書家の真情あふれる情熱と執念の書。人名・書名索引付き。


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更新履歴
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2014-05-14 


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