『KKニッポンを射る』
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〔副題〕 -
〔著者〕 内橋 克人・佐高 信
〔シリーズ〕 -
〔出版社〕 講談社
〔発行年〕 1986-11-25
〔ページ〕 318頁
〔ISBN等〕 4-06-202987-1
〔価格〕 定価1300円
〔箱・帯〕 箱:なし 帯:あり
〔体裁〕 四六判 18.8cm×13.4cm 
〔図表〕 なし
〔注記〕 巻末に《この作品は、昭和六十年十月一日から昭和六十一年五月三日まで「夕刊フジ」に連載された『KKニッポンを射る』を再構成したものです。》(319P)とある。
〔分類〕 図書

 

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関連部分
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・《「日本封建主義」の精神

●山本七平のポジとしての中川八洋

佐高 昭和四十六年にベストセラーとなった『日本人とユダヤ人』(I・ベンダサン著、山本書店)の訳者として登場した山本七平氏が、五十四年に『日本資本主義の精神』(光文社)を出しますね。
 これは私たちが話してきた「日本的なるもの」の現代版のようにも思うんですが、内橋さんはどう読まれましたか。
内橋 まず、やはり、日本の思想的貧困を感じましたね。
 これはマックス・ウェーバーの『プロテスタンティスムの倫理と資本主義の精神』(岩波文庫)を戯画化したのかもしれませんが、私がいうまでもなく、ウェーバーは、二十世紀の初頭に、マルクスに対抗できるただ一人の思想家といわれたような、非常に強烈な思想の体系を築き上げた人ですね。
 もし、その日本版をやろうとするのであれば、もう少し科学的でないといけないのではないか、社会科学の手法にのっとってやるべきではないか。
 丸山真男さんが『日本の思想』(岩波新書)の中で、すでにいろいろ書いていますが、ちょうどこういう人物を批判しているんですね。
 丸山さんは、昭和三十年代初めに、すでに、こうした思いつきでやる人物が出てくるということを、ちゃんと予見していますよ。
佐高 ただ、逆に言うと、そうした科学的でない薄手な本がなぜ読まれるのか、という問題が残りますね。深く本質に迫った日本人論が、日本人から敬遠されるのはなぜなのか、といういわば受信機の問題が残る。
 それに関連して、筑波大助教授の中川八洋氏の『超先進国日本』(講談社)という本があるんですが、「賃金も福祉も民主主義も世界一の日本。欧米先進、日本後進という通説を完全にくつがえす衝撃の〈日本白書〉」とうたっているこの本を、山本七平氏をはじめ、渡部昇一氏、竹村健一氏などが持ち上げた。
 中川氏は元官僚らしく、数字を駆使して、たとえば「福祉」も世界一だというけれども、そこでは定年制の問題がネグレクトされ、公害についてもまったく触れられていないんですね。定年制は、日本では最近、六十歳にする大企業が増えてきましたが、アメリカは七年ほど前から七十歳。中川氏がダメだというイギリスでも、大分前から六十五歳を実施している。
 中川氏はまた、日本は企業組織を含めて「専制」を拒否する民主社会だという。しかし、そこには、その中で苦しんでいるミドルへの視点はまったく欠落しているんですね。
 深田祐介さんはさすがにサラリーマンをやっていただけあって違うなと思ったのは、この本を持ち上げなかった。日本の企業の実態を知っていれば、日本が超先進国だなどとはとても言えない。だから、これを持ち上げた山本氏たちは、いかにそれを知らないかということです。それで、『日本資本主義の精神』はあからさまに日本企業バンザイとは言っていないけれども、それはネガで、そのポジが中川氏の『超先進国日本』だと思うんですよ。》

(以上、278~280頁)

 

・《かつて、猪木正道氏の防衛論をナマぬるいとして、中川八洋氏が猪木氏にカミついたと同じようなものかもしれませんが、皮肉な指摘ですね。
内橋 いろいろな人が出て来ていろいろなことを言いますね。》

(以上、306頁)

 

・参考として、以下の発言をあげておく。
《 ●腐敗する自由
佐高 未来論者でも何でも、日本人は、その人が質素な生活をしていると、それを信じてしまう傾向がありますね。
 もちろん、言行不一致は責められなければなりませんが、公と私は分けて判断する必要があると思うんですよ。
 そうでなければ、女中に産ませた子を何人も捨てたルソーの教育論など一切読めないことになる。
 一応、パブリックとプライベートは切り離してパブリックな問題はパブリックな場で追及し、プライベートな問題はプライベートな場で追及されなければならないでしょう。もちろん、それに密接な関係があれば別ですがね。》

(以上、247頁)

 

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目次
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はじめに 1

目次 6
第一章 KKニッポン就社事情 15
第二章 日本にサラリーマン文化はあるか? 37
第三章 自殺するサラリーマン 69
第四章 組織内プロフェッショナルへの道 101
第五章 強い企業と弱い個人 133
第六章 昭和演歌サラリーマン史 175
第七章 ベストセラーにみる戦後 219
第八章 「日本的なるもの」の克服 267

あとがき 317

 

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所蔵
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国立国会図書館 あり(請求記号:DH1-590)
http://iss.ndl.go.jp/
都立中央図書館 なし
都立多摩図書館 あり(請求記号:/ 3352/ 58/ 86)
https://catalog.library.metro.tokyo.jp/winj/opac/search-detail.do?lang=ja
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情報元
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他文献
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備考
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・帯情報:時代は変わりつつある。古い価値観から新しい価値観への変容をここに提示。
サラリーマン社会の種々相をテーマに、技術一流国の裏側に潜む企業社会の歪みを、文化・精神風土にまで遡って浮きぼりにした待望の対論。
※「BOOK」データベースと同一。

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内容
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・(「BOOK」データベースより)
時代は変わりつつある。古い価値観から新しい価値観への変容をここに提示。サラリーマン社会の種々相をテーマに、技術一流国の裏側に潜む企業社会の歪みを、文化・精神風土にまで遡って浮きぼりにした待望の対論。

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更新履歴
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2013-07-25


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